[公開記事] 2022.10.28(金)Kバレエカンパニー「クレオパトラ」

【興奮気味なので長文です】

先日、熊川哲也さん率いるKバレエカンパニー「クレオパトラ」の初日を観に、東京のオーチャードホールまで行ってきました。

古典ではなく、原作も音楽も存在しない中、全くの「無」の状態から作られた作品です。あまりにも安っぽい言葉かも知れませんが、「熊川さんの頭の中は一体どうなってるんだろう」というのが率直な感想です。
振り付け、衣装、舞台装置、全てがどんな言葉でも足りないくらい素晴らしくて、久しぶりに本物の総合芸術に圧倒されました。

あと、古典的なバレエの要素はふんだんに盛り込まれつつ、ストーリーを読まなくても、パッと見て大体ステージ上でどんな物語が進んでいるのかがわかるような演出になっていることが純粋に凄いと思いました。
絵画などでもそうですが、「クラシック」と呼ばれる多くの芸術作品の場合、事前にある程度勉強していかないとわからない(=敷居が高いというイメージになりがち)ものが多いと思います。

もちろん勉強してから観たらもっと楽しくなるのは間違いないですが、オールドファンやマニアだけじゃなく、全てのお客さんが楽しめるように、なおかつクラシックとして崩すべきじゃないところは崩さないように、本当に信じられないくらい細部にわたるまであらゆることが考えられていて、工夫されていて、こだわり抜かれているというのがひしひしと伝わってきました。

これはあくまでも僕個人の意見ですが、本当に素晴らしいものというのは、見た・聴いた瞬間に素晴らしいと感じられるものなのではないかと思います。
「これは〇〇の作品だから素晴らしい」という先入観で作品が評価されるべきではなく、純粋に内容の素晴らしさそのもので評価されるべきで、Kバレエのクレオパトラはそういう作品だと心から思いました。予備知識がなくても、バレエをあまり知らなくても、絶対に楽しめるので、アートに携わる全ての人に観てほしい、と感じます。

終わったあと、バレエというよりも、セリフのない映画を観たような気持ちになりました。
これは完全に想像でしかないですが、Kバレエはダンサーさんたちの表現力にものすごく重きを置いているような気がします。もちろん古典的なテクニックにおいてもトッププロの集団であることは間違いないですが、その上でどうやってストーリーを伝えるか、という部分をものすごく重要視されているように感じました。

加えて、音楽との一体感が際立っていました。ダンサーさんたちの動きと音楽に、何一つ違和感がないのが本当に凄かったです。
「違和感がない作品」を一から作るというのは、言葉で語る以上に本当に至難の業だと思うので、そこに関しても徹底的なこだわりを感じました。

セリフのない中で、ストーリーを伝えるという意味において、音楽の持つ役割が限界まで引き出されているので、クライマックスのシーンでは本当に自然と涙が出てきました。

自分が心から触れたいと思ったとき、素晴らしい作品に触れられる環境にいることに、ただただ感謝したいと思います。

ここからは余談です。

熊川さんも今年で50歳。節目の年を記念してか、3年半ぶりに舞台に上がれられるとのことだったので、悩むことなくファンクラブの先行発売開始と同時に、即チケットを申し込みました。

というのも、40歳を過ぎられたあたりから、いつ第一線を引退されてもおかしくないと思い、彼が主演する公演は全作品観に行っていました。
そして3年半前、カルメン全幕を踊られたときもチケットを取っていたのですが、後からライブの仕事が入って(さすがにバレエ鑑賞は自分にとってはプライベートなので、仕事と天秤にかけるまでもなく・・・)、泣く泣く断念しました。

その後カルメンのラストの演出を人伝に聞いて、「全幕で主役を踊るのはこれが最後」というメッセージが込められているんだろうな、と確信しました。
それまではほぼ毎年踊られていたのに、そのまま3年半の月日が流れたので、やっぱりもう踊られることはないのかなと、彼の最後のステージは観ることができなかったなあと諦めていた中、このお知らせが飛び込んできました。

なので今度は絶対に後悔したくないと思って、いつ仕事が入ってもいいように、オーチャードホールの初日(東京)、フェスティバルホール(大阪)、札幌文化芸術劇場の千秋楽(北海道)の3つに申し込みました。
そして全て当選(!)したので、(本当に贅沢極まりないことですが・・・)ナラクロの打ち上げだと思って、3つとも行ってきます。

オーチャードホール、まさかの最前列でした。
しかも下手側の一番端だったので、カーテンコールのときに手を伸ばせばすぐそこに届きそうなぐらいの距離(間にもちろんオーケストラピットはありますが)にダンサーさんたちが来てくれました。
オペラグラスを使わなくても、表情はもちろん、メイクや衣装の感じまで鮮明に見えて感動しました。

さすがにここまでいい席は初めてだったので、かなりの運を使ってしまったと思いますが、今回感じたことを、自分の普段の活動にも何かの形で活かしていけるように精進したいと思っています。

「25年間、第二の熊川哲也の誕生のために頑張ってきた」とご本人が語られているように、フィギュアスケート然り、将棋然り、野球のメジャーリーグ然り・・・どんなジャンルにおいても、業界が盛り上がるためには、結局のところ一人の圧倒的スターの登場によるところが一番大きいと感じます。
業界一のスターという責任を背負いながら、TBSと資本提携するなどしてここまで巨大になったカンパニーの経営もされながら、振り付けや演出も手掛けられながら、なおかつご自身が踊り続けるというのは本当に人間業ではないというか、常軌を逸していることだと思いますが、今シーズン、熊川さんが舞台に立ってくださることに感謝して、大阪と札幌の公演も全力で楽しんできたいと思います。

クレオパトラ パンフレット クレオパトラ 等身大パネル

4 件のコメント

  • 素晴らしい舞台だった事が、手に取るかの様に伝わります。自分自身への御褒美としては勿論、これからの仕事へのモチベーションを上げて行くうえにも一流の芸術作品に触れて行く事は、自分自身の有形無形の財産となって身に付いて行くものだと思います。表現者としての未來への輝きをもたらしてくれる事を確信しています。素晴らしい心の玉手箱が更に満たされていきますように心より願っています。✨🍀🍀

    • 好きな事を夢中でしたり観たり聴いたりして、人が心から楽しんでいる姿を見ると、そういう幸せって伝搬するものです。氷置さんの興奮が十分伝わってきました。一度最後の演技が観られなかったと嘆いた事もかえって感動をより大きなものにしたのでしょうね。僕らは氷置さんのようなSSWさんの歌を聴いて、今回氷置さんが感じたのと同じような感動を味わいたいと常々思っています。今度は氷置さんが熊川さんの立場で皆さんに音楽を届けて下さいね。

  • 中原 中子 へ返信する コメントをキャンセル

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